民法が定める権利や義務の関係は、永久に続くというわけでもありません。
時の経過によって権利がなくなってしまったり、逆に権利を得たりします。『時効』という制度です。
真の権利義務関係に反するかもしれないのに、何故、このような制度があるのでしょうか。簡単に説明すると以前から築き上げれてきた法律関係の混乱を防ぐために、永く続いた事実状態を尊重させて、法律関係を安定させよう、ということが時効を認める大きな理由です。
また、時効には、一定期間が過ぎたら権利が消滅する『消滅時効』と、自分のものとして扱うことができる状態が一定期間続いた場合に権利を取得できる『取得時効』の2種類があります。
それぞれ、権利の内容によって時効期間は様々ですが、事項期間が過ぎれば自動的に消滅したり、取得したりするわけではなく、時効の効果を発生させるかどうかは、権利を受ける者の意思に任されています。ですから、時効が発生して飲み代の返済を免れても、「良心に反している、ママに申し訳ない、借りたものは返す」というのであれば、発生後でも返済できます。
注意点をいくつか。来月で時効期間の1年が経つ呑み屋への返済がある状態で、「あとで払うよ」と言ったとします。その時点で、返済の意思があるとし て時効は発生しません。また、「金○○円、支払なさい」という手紙を内容証明郵便で送られてきたりすると、時効期間がその先6ヶ月間に限って延長されます (153条)。
-主な 消滅時効-
1年 飲食費・宿泊費・娯楽施設の使用料・CDやレンタカーなどのレンタル料・運賃・ギャラ (174条)
2年 日常生活品の代金・散髪代・ガスや電気などの料金・習い事の月謝・給料 (173条)
3年 損害賠償請求権・慰謝料請求権・医者への治療費・建築工事に関する費用一切 (170条)
※ その他(5年・10年・20年)は省略します。
- 参考条文 - 民法 162条・167条・174条・ 153条