貴方がAさんから家を買うことになりました。売買契約を済ませ、明け渡し…の前に火事により消失してしまいました。もしも、売主に落ち度があれば、債務者の責任で履行が不可能になった訳ですから債務不履行になり、貴方はAさんに損害賠償を請求することが出来ます。
では、隣家からの延焼により消失してしまった場合はどうでしょうか
Aさんには全く落ち度がなかった場合、Aさんを非難できない形で履行が出来ないので、債務は消滅してしまいます。では、貴方はAさんに代金を払うという債務はどうなるでしょうか。
このように、双方契約において一方の債権が債務者の責任によらないで履行不能になった場合、他方の債務を存続させるか否かが問題になってきます。これを、損失という『危険』をどちらが『負担』するかという意味で『危険負担』といいます。
公平を第一に考えれば、一方の債務も消滅させて無かった事にすれば良いようも思いますが、民法は、債務の内容や債権者の落ち度の有無に応じて、もう一方の債務は消滅させないという立場も併用しています。条文上、貴方が危険を負担することになり、家を手にすることはできないけれど、代金の支払いは免れないとされています。